今日のテーマはおもちゃ!
仕事上、今までの17年間で500-800人くらいの方の家にお邪魔し、発達相談・療育のお手伝い・カウンセリングをしてきた私。
おもちゃに関してはたーくさん書きたい事があります。
なので、このテーマは何度かに分けて少しずつ書いていこうと思います。
今回は、おもちゃの基本の選び方です。
よかったら最後までお付き合いください😊
※すべてのコンテンツは私の個人的見解です
おもちゃは量ではなく、質
おもちゃって、意図していなくてもすぐに増えます。
子供がねだったからとか、パッと見て可愛いからとか、誕生日やクリスマスに親戚からもらったからとか、何かのおまけで付いてきたとか・・・。
色んな理由で家に入ってくるおもちゃ。
気が付くとあまりに増えすぎて整理整頓が大変になったり、家のなかがおもちゃだらけだと感じたり、「ジャンク」(いわゆる、ガラクタ)なおもちゃが増えたりしてしまいます。
また、量が増えると子供自身も目的のおもちゃを見つけ辛いので、おもちゃ箱をひっくり返して探したり、それを全部しまうのが面倒になったり、結果として色んなおもちゃで遊ばなくなってしまうこともあります。
おもちゃに関しては「量より質」です。
10個の質の悪いおもちゃを与えるよりも、1個の質のいいおもちゃを与える方が子供にとっていい影響があると言えると思います。
では、質のいいおもちゃとはどんなものでしょうか?
それは多目的・多様に遊べて作りがしっかりしており、長く遊んでも劣化しにくいものです。
多目的とは、色んな遊び方が考えられるものです。
たとえば、このおもちゃを見てください。
アメリカで売られている人気のおもちゃです。
5つのボタンを押すとそれぞれ歌ったり、光ったり、歩いたり、まばたきするもので、1歳から3歳くらいを対象にしているようです。
このおもちゃは、残念ながら多目的・多様に遊べるとは言えません。
ボタンを押して特定のアクションを見たり、一緒に歌ったり踊ったりはできるかもしれないですが、その先には中々発展していきませんね。
このおもちゃが悪いおもちゃだ、と言っているわけではありません。ただ、目的や用途が限られているので、使い方・与え方を誤ると子供の飽きるのも早いし、考える力などが身に付くというわけでもない、と言えるでしょう。
このおもちゃは機能的にはスマホやタブレットと似ていて、ボタンを押すことで自分が楽しめる現象が起こるという、エンターテイメントに近いものです。
つぎにこちらのおもちゃを見てください。
いわゆる色のついた積み木です。
上で紹介したおもちゃとは違い、こちらは「こうしなければいけない」という遊び方はありません。積んでもいいし、並べてもいいし、数えてもいいし、種類別・色別に分けてもいいし、ピースを組み合わせて家にしたり、車にしたり、ベッドにしたりもできます。
そのまま積んで何かの形を作る遊び、作ったものを使うごっこ遊び、ジェンガのように積んだものを崩さないようにする遊び、逆に組み上げた物を崩す遊び、ピースを何かに見立てて他のおもちゃ(人形など)と組み合わせるごっこ遊び、などなど。
さらっと挙げただけでも沢山の遊び方があります。
もう一つの特徴は、この種類のおもちゃは「自分で考えてなんらかの働きかけをしないと楽しくない」ということです。
ボタンを押すだけで何か楽しい事が発生するわけではなく、創造力を働かせて遊んではじめて楽しいと思えるのです。
このことこそが、子供からのイニシエーション(働きかけ)を促し、自由に柔軟に考える力をつけ、自主性を育むことにつながります。
モンテッソーリ教育でよく言われるのが、
Passive Toys Makes Active Child (Learner) - 消極的なおもちゃで積極的な子供になる
です。
つまり、おもちゃからは歌ったり動いたり、何もしてこなくていいのです。
クローズ・エンドとオープン・エンドの考え方
おもちゃにはクローズ・エンドとオープン・エンドという種類があるのをご存知でしょうか。
クローズ・エンドとは、関わる中で始まりと終わりがあるもの。
たとえば、パズルや「型はめおもちゃ」などがそうです。ピースをはめていって、全部がはまったら終わりです。また、上で紹介した鳥のおもちゃも一定時間歌が流れると止まるのでクローズ・エンドのおもちゃです。
もちろん繰り返して何度も遊ぶことはできますが、明確に終わりが決まっているのが特徴です。
このおもちゃのメリットは終わりがあるので区切りがつきやすく、次のアクティビティに進むのがスムーズになることです。もしクローズ・エンドのおもちゃを沢山の遊びの中の一部として取り組んで、終わったら別の事をしてほしいという場合に役立ちます。
また、発達障害などの療育で用いられるおもちゃは明確な始まりと終わりがあるほうがわかりやすく、本人もすることが明確で無理なく取り組める場合が多いため、こちらがよく使われます。
オープン・エンドとは、関わる中で始まりと終わりが特になく、終わりを自分で決めるもの。
たとえば上で紹介したようなつみきなどがそうです。自分で終わりを決めなくてはいけないので、遊ぼうと思えば延々と遊べます。遊びを発展させることもできるので、遊びに集中しやすいのはこちらです。
オープン・エンドのおもちゃのメリットは、終わりがないので遊びに没頭しやすく、創造力・自主性・思考力・集中力が身に付きやすいことです。クリエイティブな活動に向いていると言えますね。
どうしてこのオープン・クローズの考え方を知るのが便利なのかというと、何も考えずにおもちゃを次々に買ってしまうとどちらかに偏る可能性があるからです。
上記したように、どちらもメリットはあるのですが、子供によって好き嫌いがありますし、なるべく沢山の種類のおもちゃに触れる方が良いと言えます。また、遊びの中で特定のスキルを伸ばしたい、という場合もそれぞれの特徴を考え、与えることができます。
特にオープン・エンドのおもちゃを用意しておくのは子供の自己表現を促すためにも役立ちます。
おもちゃの機能を均等に
クローズ・エンド、オープン・エンドの違いがわかったところで、次に考えていくのはおもちゃの機能です。
機能といっても、喋るとか動くとかの機能ではなく、子供にとってどんな機能を果たすのかということです。目的、と言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。
例えば、こちらのおもちゃを例にしてみていきます。
これはモンテッソーリおもちゃ、というわけではないのですが、モンテッソーリをやっている方がよく持っているおもちゃです(うちにも同じ系統のものがあります)。
このおもちゃの機能としてあげられるのは、色の識別、大きさの識別、法則に沿って並べる、ということ、ピースを数えること、実際にリングにピースを通す際に使う微細運動の訓練、などです。遊び方にもよりますけどね。
一つで5つは多機能と言えます。
子供が今どんなことに熱中しているか、(入れる、回す、分ける、数えるなど)に合わせてあげてもいいし、こんなことを教えたい、という目的でもいいと思います。
うちの11か月の娘はまだ色や数を言ったり、並べたりはできません。その代わり、ピース同士を打ち鳴らして遊んだり、小さなピースを他の容器に入れたり出したりして遊んでいます。子供の成長に合わせて遊び方を変えられるのもこのようなおもちゃの特長ですね。
次にこちらのおもちゃを見てください。
傾けることでシャラララと美しい音がする、レインメーカーといわれるおもちゃです。
こちらのおもちゃの機能は至ってシンプル: 感覚刺激です。
頑張れば色を教えることができるかもしれませんが、色を教えたいのならわざわざこれを使わなくても他にいいおもちゃがたくさんありますよね。
このおもちゃも、悪いおもちゃというわけでは決してありません。現にセラピーの現場でも音を鳴らして落ち着く効果があったり、こちらに注目して欲しい時にシャカシャカ振ったりできるので便利です。
ただ、多機能ではないということです。
機能に関して、多ければいいということではありません。ただ、自分が選んだおもちゃの機能が偏ってしまうと子供は学んだりスキルを身につけたりする機会を逃してしまうかもしれません。
なので買う時はおもちゃの機能を考えてみましょう。
そして、自宅に今持っていない機能のあるおもちゃを買うようにすると、バランスの取れたセレクションになると思います。
おもちゃの素材
最近、モンテッソーリやシュタイナー教育が人気であることもあって、自然素材のおもちゃが人気です。
シュタイナー教育にもいずれ触れようとは思っていますが、とりあえず私の学んだ限りのモンテッソーリ教育に関していうと、自然素材のおもちゃをすすめています。
それにはいくつか理由があります。
1.手に触れる感覚を大事にしているから
モンテッソーリの敏感期のことはこちらの記事
に書きましたが、感覚の敏感期は生まれた時から6歳くらいまで続きます。その中で役割を果たすのが自然素材のおもちゃです。様々な種類の木を始め、竹、木綿、絹、石、木の実など、プラスチックの一辺倒な感覚に比べて触り心地も重さも硬さも温度も様々なおもちゃから感覚を受けられるのがメリットです。
また、組み合わせた時に鳴る音も様々なので、聴覚のいい刺激にもなりますね。
2.地球環境のことを教育に取り入れているから
感覚教育だけでなく、モンテッソーリ教育は地球環境の教育にとても力を入れています。自分が住んでいる周りの環境をとても大事にしているからです。
少し年齢の高いお子さんになれば、自分が使い終わったものがどうやって捨てられ、リサイクルされ、次の物に生まれ変わるのかの教育をしたい親御さんも多いと思います。
手に触れるおもちゃは子供をとりまく環境の一部と考えるモンテッソーリなので、リサイクルの難しいプラスチックではなく、自然に帰りやすい天然素材を使うことを進めているのです。
3.オープン・エンドで多機能のものが多く、長持ちするから
最後は、自然素材のおもちゃはプラスチック製のおもちゃに比べ、オープン・エンドで多機能なものが多いからだと思います。
バッテリーで動くエンターテイメント系のおもちゃはプラスチックなものが多いし、「子供の成長に合わせておもちゃも成長する」という考えが当てはまるのは、やはり自然素材のもの、という結論になるのだと思います。
素材について書きましたが、プラスチック製のおもちゃを悪者にしたいわけではありません。特に子供の年齢が低いうちは、安全性を考えてプラ・ゴム・シリコンなどがいいという意見もあります。実際うちにもプラスチック製のおもちゃがあります。
ただ、上記した理由を踏まえて、プラスチックだけに偏らないようにするのが賢い選び方だと思います。
最後に
おもちゃの選び方を書いてみました。
ある程度の年齢になれば、自分で使いたいおもちゃを選ぶようになると思います。
その時にも、親の指針がしっかりしていれば親がリストを作り、その中から子供が好きなものを選べるかもしれません。
おもちゃは子供の身近にある存在ですので、今回の選び方が参考になれば幸いです。
次回は「賢いおもちゃの与え方」を書こうと思います。
読んでいただいてありがとうございます!