Rimの家庭でできる「ゆる」モンテッソーリ子育て in Hawaii

ハワイでのワーママ子育て雑記。ハワイ生活、モンテッソーリ、発達心理学などのテーマも。

良いママじゃなくて、自分のままで - 母親の罪悪感を克服するには

前回は母親の感じる罪悪感について書きました。

背景に沢山の要因があって、母親の90%が罪悪感を感じたことがあると知って私もびっくりしました。

では、その罪悪感をどのように受け止め、どのように克服したらいいのでしょうか?

今回はいくつかの解決案を見ていきたいと思います。

 

 

 

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"Good Enough Mother"とは?

イギリスの小児科医、精神分析医であるデビッド・ウィニコットという人は1953年の著書の中で「Good enough motherでいるのが一番良い」

と言いました。

この人のこのフレーズは現代の発達心理学でも使われ、私も臨床の場でクライエントのお母さんに何度か話したことがあります。

このGood Enough Mother、日本語に訳すと「十分に良い母親」となるわけですが、では十分とはどれほどのことなのでしょうか?

 

ウィニコットによると、生まれてすぐの赤ちゃんは自分とお母さんの区別がまだつかず、お母さんを自分の一部のように思っています。

お腹が空いたらすぐにミルクをもらえたり、常に抱いて温かくしてもらえたり、おしっこをしたらすぐにオムツを替えてもらえたり。

でもだんだん発達するにつれ、赤ちゃんは自分とお母さんが別人であることを学んでいきます。

それはお母さんを求めても「ちょっと待っててね」と言われる時があったり、お腹が空いて泣いてもミルクがもらえるまで少し時間がかかったり、オムツを少し長い時間そのままにされたりすることによって、「求めているのは自分、満たしてくれるのはお母さん」ということに気がつくからです。このごくごく短時間の「要求が満たされるまで待っている時間」によって、赤ちゃんはこの世界の理(ことわり)のようなものを学んでいくのかもしれません。

この気づきを赤ちゃんに与えてあげるのがGood Enough Motherです。

 

Good Enough Motherは完璧ではないので、時には赤ちゃんを待たせてしまったり、忙しくてすぐに構えなかったりするのです。もちろん、長時間ではありませんが。

 

このお母さんとの関係から、赤ちゃんは自分のニーズを泣いて訴えつづけること、伝えようとすること、そしてお母さんを信頼して待つことを学びます。

もしお母さんが完璧な人で赤ちゃんの要求を声をあげるまえにすべて完全に叶えてしまっていたら、赤ちゃんは少しの時間待つことも、その間お母さんは来てくれると信じ続けながら声をあげることも学べないかもしれません。

そしてこれらのスキルは子供が大きくなる過程でとても大事なのです。

 

これが一番最初のポイントである、「完璧を求めない」につながります。

 

 

完璧を求めない

ということで、初めに私たち母親が何度も自分に言い聞かせることは

「完璧じゃなくていい」

ということです。

 

前の記事で書いたように、社会や他の人に完璧な母親像を求められることが多いですし、自分でも自分で思い描いた理想の母親の影を追ってしまいがちです。

でもその理想は、幻想でしかないのです。

 母親も人間です。

間違いを犯し、それを修正しながらもっといい方法を探ります。

迷いながら自分と子供と家族にとって良いと信じる方法を選択します。

 

ウィニコットが示したように、子供の成長というのは得てして親の完璧ではない部分の綻(ほころ)びから生まれます。

少しのイライラや、少しの目の前の問題や、少しの困難があってそれを乗り越えようと努力する中で成長していくのです。

 

すべてにおいて完璧な母親は、この世に存在しません。

今の自分のままでも、できる範囲で頑張って子供の世話をし、できる限り一緒に時間を過ごしているなら、もうすでにGood Enough Motherではないでしょうか。

 

 

比べない

前の記事で要因の一部として挙げたのが、SNSなどメディアの影響と子供の成長のばらつきでした。

そこにはどうしても自分と他人を比べてしまうプロセスが存在します。

 

また育児本の中には、子供の今とこれからの将来の才能、展望、スキル、性格、行動などがすべて母親の育て方によって左右されるような、誤解を招く書き方をしているものがあります。

 

それらのどこまでが遺伝要因でどこからが環境要因かというのは専門家の間でも未だに議論がなされているのですが、今の所、遺伝と環境が50%くらいなのではないかという見方が一般的です。

 

つまり、子供の気質や行動などの一部は母親であってもコントロールしたり変えたりできないのです。

また、成長が早い子よりも遅い子の方が能力が低いという共通した研究結果も出ていません。子供はそれぞれが自分のペースで、昨日の自分より成長しようとみんな頑張っているのです。

 

それなのに、お母さんが他人の子供と比べて焦るあまり「自分はダメな母親なんじゃないか」ひいては「自分に育てられたこの子は可哀そうな子だ」となってしまったら、頑張っている子供と合わなくなってしまいますね。

 

だから、人と比べるのはやめましょう。

比べそうになったら、他人を見るのをやめましょう。

 

その分、自分の子供を見ましょう。

今どんなことをやろうとしているのか、どんなことに興味があるのか、どんなことを頑張っているのかに焦点を当てましょう。その方が建設的です。

SNSなどのメディアによってついつい比べて落ち込んだり嫌な気分になるときは、見る時間を減らしたり、見るコンテンツを絞ったり、思い切って一時やめるのもいいかもしれません。

 

 

一緒の時間と出来たことを味わう

上記の部分と一部被りますが、人と比べないことは子供の成長だけでなく、母親としての自分にも当てはまります。

 

絵本を読んであげたかったけど、時間が取れなかった。

ご飯を手作りしたかったけど、出来合いで済ませてしまった。

家事・仕事が忙しくて少ししか遊んであげられなかった。

お出かけしたかったけど、できなかった。

記念日を祝ってあげたかったけど、自分の思ったようにできなかった。

 

他のママと自分を比べたり、自分の中の理想のママになれなくてこんな罪悪感を心に抱えてしまったとき、無理にその罪悪感を感じないように消そうとする必要はありません。

罪悪感は自分の「いいママでありたい」意欲から生まれて来るものです。

その意欲まで否定する必要はないのです。

 

じゃあ、どうしたらいいのか?

 

感じている罪悪感はそのままに、一日のうちで自分が出来たことと、一緒にいられた時間に注目してください。

 

絵本は読んであげられなかったけど、一緒に歌を歌った。

出来合いの食事だったけど、一緒に食べられた。

少ししか遊んであげられなかったけど、少しでも一緒に遊べた。

お出かけはできなかったけど、家で遊んであげられた。

記念日はお祝いできなかったけど、一緒にこの日を迎えられた。

 

過ぎてしまった時間は変えられないけど、どこに注目するのかを変えるだけでいいのです。そして、その部分を思い出し、味わい、自分がママとしてしてあげられたことを認めてあげてください。

 

 

私自身の体験

 

前回の記事で私が5つの罪悪感を感じた実体験をあげました。

その中の母乳が吸えなかった出来事を上記の手法を使って、罪悪感がどういう風に消化したのかを見ていきます。

 

私の場合、諦めが悪い性格で、娘が直接飲めないとわかった後もしつこく練習を繰り返して母乳にこだわってしまいました。2か月にさしかかる頃には、娘は私が胸を出して抱いただけで嫌がって泣くようになりました。

それまで、自分のせいで母乳が上手く飲ませてあげられない罪悪感に加えて、今度は娘に辛い思いをさせている罪悪感も感じ始め、どうにもならない状態に。

そこでもう、それまで相談していたLCさんに最後の予約をしました。それで飲まなければ諦めようと決めました。

そしてLCさんと頑張りましたが、結果は変わらず。

 

 ただその日、LCさんのプロの手のおかげもあってか、一週間ぶりくらいに数分娘からおっぱいに吸い付いてきてくれました。

すごく嬉しくて、いつまでも胸に吸い付く娘の姿を目に焼き付けておきたいのに、涙が溢れて目の前がよく見えませんでした。

 

そして、LCさんに授乳の写真を撮ってもらいました。

私は泣き顔でしたが、娘は目を閉じてうっとりしているような、なんとも言えない表情でした。

 

それが、娘が最後に私から母乳を飲んだ日でした。

 

娘はそれから一度も私から母乳を飲んでいません。

ただ、搾乳した母乳は哺乳瓶から飲んでくれています。

3回食の離乳食を食べるようになった今でも、私は一日5-6回搾乳をし哺乳瓶で母乳をあげています。出る母乳の量はだいぶ減ってはきたものの、娘はたくさん飲む方ではないのでそれで成り立っています。

 

おっぱいをあげることを諦めた時は罪悪感で胸がいっぱいでした。

 

でもそれは私の勝手な理想だったのかな、とも思えました。娘はたぶん自分が一番と決めた方法で、自分に必要な栄養を受け取ることにしたのかな、と。

 

それでもしばらく、SNSやウェブで他のママさんたちのおっぱいでの授乳の投稿を見る度に胸に罪悪感を感じていました。自分がしてあげられなかったことを思い出したからだと思います。

 

そしてある時、そこに注目するのをやめました。

代わりに自分が出来たこと、頑張ったこと、一緒にいられたことを考えることにしました。

搾乳ではあるけれど、自分があげたいと思った母乳を与えられてよかった。

娘にどんな形であれ授乳ができてよかった。

悩んだり泣いたり泣かせたりしたけど、娘の頑張る姿を褒めてあげられてよかった。

娘が栄養を十分摂り、ここまで成長してくれてよかった。

 

罪悪感を今まったく感じないか、と言ったらそんなことはありません。

今もこの記事を書きながら、感情が溢れてきそうになります。

でもあの時のように、罪悪感で胸がいっぱいになることもないし、それで自分のことを良いママじゃなくてごめん、とも思わなくなりました。

理想の形ではなかったかもしれないけど、今では自分のした選択も、そこまでかなりの回り道をしたことも、良かったんじゃないかと思います。

 

あの時LCさんに撮ってもらった写真は、今でも私の宝物です。

 

 

基本のセルフケア(心と体)

罪悪感を克服するために他にできることは、ママのセルフケアです。

ここでいうセルフケアとは、睡眠、食事、運動、休憩などの基本的な生活習慣を整えることと、心を休ませるメンタルケアのことです。

 

産後直後のママさんだけでなく、年齢が進んだ後も子供の睡眠時間・病気・夜泣きなどによって中々睡眠時間が確保できないこともあると思います。

だからといって、ママが寝不足だと負の感情(罪悪感含め)は加速します。

 

子供が寝た後、やること多いですよね。

子供が寝てからでないと、できないこともありますよね。

 

でもあえて時々は、子供が寝て自分の就寝準備をしたらベッドに入りましょう。

明日の離乳食の準備があっても、掃除や後片付けがあっても、仕事の準備があっても、後回しにできることはして、他の人に頼めることは頼んで、自分をケアする時間を取りましょう。

疲れている時に休むことで体は自己修復し、また元気に忙しい日々を頑張れるようになります。

 

その他にも、栄養のある食事を摂り、適度な運動をし、休憩を取って自分の時間を作ることで罪悪感の要因になるような負の感情の一部は改善します。

忙しいから、頼れる人がいないからと、ついつい自分のこのようなニーズが疎かになってしまいがちですが、ママ自身が健康でいるためにこれらの時間を取れるように心がけましょう。

 

では、日々のメンタルケアとしてどんなことができるでしょうか。

今回は二つのキーワードを挙げることにします。

 

一つ目は"Let Go"(手放す、解放する)

何だかアナ雪の世界ですね。

 

何を手放すかというと、

  • 自分自身の非現実的な理想
  • 「こうじゃなきゃ!」というこだわり
  • 思い通りにならないこと
  • 支配できない他人の行動
  • 起きてしまった過去の出来事

などです。

 

これらに共通するのは「考えても解決しない」ということです。

 

私自身の母乳問題、考えても解決しませんでした。自分でできる限りの解決策を試したけど解決しませんでした。

だから最後は、手放しました。

自分の理想とこだわりを手放して、今ある娘との関係・自分でできることの方を選択しました。

 

このように日々起こる「どうにもならないこと」、手放しましょう。

そうすれば心が軽くなると思います。

 

二つ目は"Acknowledge"(認める)

英語のお勉強みたいですが。

認めると日本語訳される単語はいくつかありますが、Acknowledgeには承認する、感謝するなどのニュアンスが含まれます。

 

何を認めるかというと、

  • いいママになろうとする意欲や意志
  • 自分の努力
  • 挑戦したこと
  • 間違いに気づいたこと
  • 頑張ったこと

などです。

 

罪悪感の原因はやりたくてもできなかったことであることが多いと思います。

子供の苦しさに気づいてあげられなかった(気づいてあげたかった)

忙しくて十分一緒に時間を過ごせなかった(過ごしたかった)

子供の行事に行けなかった(行きたかった)

食事を作ってあげられなかった(自分で作りたかった)

 

罪悪感を感じているということは、良いママでありたいという思いがある証拠です。

もしどうでもいいや、と思っていることなら、叶わなくても罪悪感など感じないでしょう。

自分の理想と現実は違うものだったかもしれないけど、そこへ向かおうとしていた自分の決意、意志、努力、頑張りを認めてあげましょう。

 

よく頑張ったね。

勇気ある決断だったね。

できるだけのことをしたね。

よく間違いを認めて立ち止まったね。

など、自分に心の中で声をかけてあげましょう。

 

この「手放す」「認める」がうまくできるようになれば、罪悪感は消えることはないとしても、自分の心を支配するまで大きくなることはないと思います。

 

 

 

サポートのネットワーク

 前回の記事で、サポートの少なさが母親の罪悪感の後押ししているということを書きました。

悩みを誰にも相談できなかったり、子育てを一緒に担ってくれる人がいないなどの理由で孤独や孤立を感じているママは少なくないと思います。

そこで私たちにできることは、サポートしてくれる人のネットワークを作ることです。

 

旦那さんは一緒に子育てをしてくれ、相談に乗ってくれるでしょうか。

周りの家族、友人、知人の中で自分をサポートしてくれる人はいるでしょうか。

自分の市町村にママのためのサポートグループはあるでしょうか。

もしそれらが選択肢にないのなら、インターネットを介したグループや、SNS上の繋がりでもいいと思います。

もしそのどちらもない場合は、カウンセラー(*)、ライフコーチ(**)など話を聞き導いてくれる専門家に相談する方法もあります。

いずれにせよ、目標は自分の周りを味方と助けてくれる人たちで囲むことです。

 

それと同時に、他のママを批判したり、自分の価値観を押し付けたり、仲良しグループの仲間外れを作ったり、マウンティングを取ったりするのは自分にとっても良くないです。人にすることは自分にも返ってきますからね。

基本的に人を攻撃すればするほど、一時自分の溜飲は下がりますが批判を繰り返す人が自分の周りに集まってくるのでいい人間関係を結ぶのは難しくなります。

こういう言動をする人を実生活やSNSなどで見かけた時には、私は「きっと自分に自信がなくてあの人よりは自分の方がまし、と思いたいんだろうな。可哀そうに」とそっと思います。

 

私たちママができることは他のママに優しくあることです。ママ以外の人がママに厳しい社会なのなら、せめて同じママくらいは味方になってあげてもいいんじゃないでしょうか。

 

 

備考:

お金を払って相談する場合、相手が資格を持っているか、自分が相談したい分野の実務の経験があるかどうかをちゃんと確かめましょう。

臨床心理士の資格を持つカウンセラー

**国際コーチ連盟(ICF), 一般財団法人生涯学習開発財団、または一般社団法人日本コーチ連盟(JCF)から認定されたコーチ

 

 

それでも罪悪感に押しつぶされそうな時は

罪悪感を克服する方法、いくつか見てきました。

ほとんどの場合、すべて実践しても完全に罪悪感が消える事はないかもしれません。でも自分の心が罪悪感でいっぱいになることは減らせると思います。

 

ただ、これらのことを実践してもなお、罪悪感に心が押しつぶされそうな気持ちがずっと続く場合、もしくは罪悪感の感情に加えて気分の落ち込み、不眠、気力の減退、以前楽しんでいたものの興味の喪失、思考力の低下、死にたいなどの感情がある場合は要注意です。

 

実は罪悪感はうつ病の諸症状の一つ。

 

上記のようなことが2週間以上続く場合、専門医(心療内科や精神科)の受診をおすすめします。

 

 

最後に

罪悪感を克服する方法、いくつか見てきました。

 

この話題に限ったことではないのですが、色んな問題で臨床をする中で時々思い出す詩があるのでご紹介します(キリスト教の祈りが元みたいですが、使う時は宗教色を抜いています)。

Serenity Prayerといいます。

 

Grant Me the Serenity

To Accept the Things I Cannot Change,

Courage to Change The Things I Can, and

Wisdom to Know The Difference

 

私の訳で申し訳ないのですが、こんな感じの意味です。

「私に、心の平穏をください。

変えられない事を受け入れるための。

変えられる事を変える勇気を。

そしてそれらを区別するための賢さを」

 

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長い記事を最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました!